【原作と比較】「響け!ユーフォニアム」アニメ1期を徹底考察

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響け!ユーフォニアムアニメ1期を徹底考察!
アヒル

響け!ユーフォニアムをもっと知りたい!

カエル

原作と小説を死ぬほど読んだので考察する!
ユーフォは観るたびに、泣いてしまう!

この記事では、響け!ユーフォニアムのアニメ1期を徹底考察する。
主人公の黄前久美子が「北宇治高校に入学し、京都府大会で金賞を取るまで」の期間だ。

私は小説も全巻読み終えているため、小説とアニメの違いも解説する。
アニメ1期は、小説の1巻の範囲となっている。

ストーリーの概要はwikiなどを参照頂きたい。
響け! ユーフォニアム – Wikipedia
今回の解説では、各キャラクターの内面を掘り下げている。

画像は著作権に配慮してTwitterの投稿を引用しました。
私の文章の中に、Twitterの投稿を挟んでおります。
グレーのボックスは小説を引用しています。

この記事でわかること

響け!ユーフォニアム小説1巻は「後悔」がテーマ

主人公の久美子が学校に携帯を忘れ、練習場所へ取りに行く際に滝先生と会話するシーンがある。
この「階段を登る」様子は「大人になること」のメタファーである。

滝先生は子供の頃に将来の夢が沢山あったという。漫画家、映画監督、俳優、陶芸家などだ。
滝先生は言う。
「でも、結局選んだのはこの仕事でしたよ」

小説の久美子は滝先生に質問する。
「…後悔してないんですか?」

ここで「後悔」という言葉が使われたことに、少し違和感・強引さを感じた。
幼少期に色々な夢があったというのはよくある話だ。
滝先生は自分で選び、努力して先生になっているわけである。

このやり取りから、アニメ1期(小説1巻)のテーマは「後悔」だと考察する。
例は以下の通り。(麗奈と久美子はこじつけに近い)

各キャラクターの後悔
  • 香織のソロパートの再オーディション
    (後悔しないための行動)
  • 葵はアリバイを作り、好きな吹奏楽をやめた
    (後悔する行動を取った)
  • 夏紀は過去の自分に後悔している
    (部の悪い雰囲気に流された)
  • 麗奈は中学時代のダメ金に後悔し、努力する
  • 久美子は同じ中学の生徒の少ない北宇治を選んだ
    (過去の自分への後悔)

後悔する行動を取った人物がいることで、納得を求めてもがいた香織の行動が一層意味を持つ。

2年生「中川夏紀」について

小説の夏紀アニメと印象が異なる。
「小説1巻、アニメ1期」は特にそれが顕著である。

アニメ2期以降は、アニメと小説の夏希のイメージは同じである。

小説の夏紀は口が悪い?

アニメ1期の夏紀は、サボりがちでクールだが、心優しい印象。

小説の夏紀は、口は悪いが後輩にマーチングの説明をするなど、面倒見が良い。

以下、小説の夏紀のセリフを引用。
アニメ1期の気だるげなイメージとはちょっと違う。

まず先頭にガードの二人な。そのあとにドラムメジャー。
それからちょっとあいだを空けて金管が並ぶ。
ちなみにトロンボーンが先頭な!
あいつらの前に立ったら、楽器で頭刺されるから!

コンクールメンバーのオーディション久美子が合格夏紀が不合格になった後のやり取りも印象的だ。

「じゃあさ、いまからマクド行こうや」
「マックですか?」
「なんやのマックって。パソコンか!」
「いや、だってマックはマックですよ。」
「どっから小さいツが出てきてん。絶対マクドやろ」
「とりあえず、二人でマクド行こう。百円まではおごったるから」
「百円で何が買えるんですか。あと、マックですよ。」
「何か買えるわ。マクドは学生に優しいお店やからな」

この文章は何度読んでも笑ってしまう
久美子も決して譲らない。

実はこのシーンの直前まで、久美子は中学時代の先輩から受けたトラウマに怯えている。
小説では、中学時代の先輩は久美子のユーフォニアムを蹴っている。

暗い回想シーンから夏希との会話に移るため、読者の感情の振れ幅はとても大きくなる。

笑って泣けて、1巻のこの時点で既に「響け!ユーフォニアム」は傑作小説である。

小説の夏紀は「自分を許せない」

マック(マクド)でシェークを飲みつつ、夏紀は久美子にオーディション後の心境を話す。

アニメでは「黄前ちゃんのおかげで少しは上手くなれた気がするよ。」と伝え、楽譜に「絶対金賞!!来年一緒に吹くぞ!!」とメッセージを書く。

夏紀の演奏は、それを聴いた久美子が「あすか先輩の音かな?」と思う程である。
短い間に大幅に上達したのだろう。
全てが解決する前向きなシーンだ。

小説の夏紀は、アニメの素直な夏紀とは全く違った。
[マック(マクド)でのシーン、長めの引用]

「正直、コンクールとかどうでもいいねんなあ。AでもBでも。」
「なんかめんどいやん?そういうの。周りがやってるからいちおうやってるけど。」
「そもそもこの部活に入ったの、ダラダラできるって聞いたからやし。みんながやる気出し始めたんも今年からやから。なんか部活の変化についていけへんねんなあ」

「あの子らは先輩たちを説得して、なんとか練習頑張ってもらおうと努力した」
「でも、その努力は無駄やったけどな」
「上級生のやつらが、潰しちゃったから」
「先輩のなかにも練習を真面目にやってるやつはいた。あすか先輩とかな。でも、あの人はただ自分のために吹いてるだけやから、力になってくれんかった」
「あすか先輩はただ、自分が楽器を吹けたらそれだけで満足やねん。周りが下手とか、コンクールとか、ほんまはそういうのどうでもいいと思ってはる。あの人は、周りがサボってるなかで一人死にもの狂いで練習してたから、だからあんなに上手いわけ」

「……夏紀先輩は、その、辞めちゃった二年生と、仲が良かったんですか?」
「どうしてそう思うん?」
「だって、その……なんか、怒ってるように聞こえたんで」
「怒ってるって……誰に対して?」
「卒業した去年の三年生とか、あとは……見て見ぬふりをした人たち、とかに」

「なんで去年、皆がコンクールで頑張れへんかったんやと思う?」
「滝先生は怖いけど、それって頑張る理由にはならへんと思わん?去年はさ、練習するほうが変みたいな顔してるやついっぱいいた。なのに今年はAに行けへんかったくらいで泣いちゃうやつとかおってさ。気持ち悪ない?去年まではなんやったんって感じちゃう?」

「それは…確かに、」

「空気」

「だからさ、空気。うちの部活って、周りの空気に弱いわけ。だから皆が頑張るって言ったら頑張るし、頑張らないって言ったら頑張らない。多分、たったそれだけの理由やで。去年と今年の違いは」
自分があるやつなんて、ほとんどおらん。

「そういう意味じゃ、滝先生はまとめるのが上手いな。そういう空気を作るのが」
「そもそも初めの合奏のときとか、あんなふうに合奏を途中でやめんでも、きっちり指導したらよかったと思わん?そしたら皆、滝先生の指導に逆らったりはしいひんかったはずや。あの人、腕はあるんやし」
「先生の戦略は上手いわ。二回目の合奏で、うちらは一気に上手なった。あの合奏でうちらは滝先生の実力を認めざるをえんくなった。あの先生はわかってるんや、空気の作り方を」
「結局うちらは、そういう空気に乗せられているだけなんかもしれんなあ」

小説の夏紀のセリフは、卒業した先輩とあすか先輩と滝先生の批判に見える。
しかし、久美子が夏紀に不快さを示す描写はない。

これは単なる批判ではない。夏紀の発言には理由がある。

夏紀は、1年生をいじめる空気に流され、何もできなかった自分に怒っている。
また、その頃に練習しなかった自分に対して怒っている。

オーディションに向けて楽器を練習している今の自分に対しても、滝先生が作った空気にまた流されているだけであり、過去から何も変われていないと感じている。

頑張っている今でもなお、自分を許せない夏紀の後悔がこの場面から伝わってくる。

この辺のダークなセリフは原作者の武田綾乃氏の「らしさ」を感じる。

カエルの友人にユーフォのアニメを観てもらったのだが、「夏紀が急に前向きになったのは違和感がある」という方もいた。(普段全くアニメを観ない人)
小説の少しやさぐれた夏紀の方が、心境の移ろいとしては自然なのかもしれない。

1年生「高坂麗奈」について

勉強と吹奏楽の両方で立華高校への推薦をもらっていながら、滝先生を目的に北宇治高校へ進学した麗奈。

アニメ1期の麗奈について、気になる部分を考察する。

麗奈と久美子の共通点「当たり前の人の流れに抵抗した」

優等生で美人の麗奈が、どちらかといえば目立たない存在の久美子に惹かれた理由を考えてみる。

2人は同じ中学校に通っていたが、吹奏楽は人数が百人近い。
「本気で全国行けると思っていたの?」のやり取りを除けば、あくまで顔見知り程度の関係だった。

そもそも原作者の武田綾乃氏は、高校生同士が友達になることに理由を求めないだろう。
アニメの2期で「みぞれが希美に依存する」のに明確な理由がないのを見れば、それは明らかだ。

大人と違って、高校生は友達になることにメリットを必要としない。
だが、アニメを見る側のおじさんは、愚かにもそれらしい理由を求めてしまう。
考察に戻る。

アニメでは、久美子と麗奈の距離が徐々に近づくようにエピソードが追加されている。

しかし、麗奈が久美子に惹かれていくことに関する明確な理由の描写はない。
あくまで麗奈が久美子に「性格悪い」と漏らすだけだ。

それに対して、麗奈がA.ドヴォルザークを吹くシーンのように、久美子が麗奈に惹かれる理由は分かりやすい。
麗奈が吹く「新世界より」を聴いて、久美子は勇気付けられた。

麗奈が久美子に惹かれた1つ目の理由は言葉通り「性格が悪い」からだろう。
性格の悪い久美子のことをつい考えてしまったか、正直で冷静、純粋なところに魅力を感じたのではなかろうか。

麗奈が久美子に惹かれた2つ目の理由は「久美子が北宇治高校を選んだ」からだと思っている。

あがた祭の日、大吉山で麗奈は久美子に言う。

私、特別になりたいの。他の奴らと同じにはなりたくない。
誰かと同じで安心するなんて、馬鹿げてる。
当たり前に出来上がってる人の流れに抵抗したいの。

サンフェスの日、久美子は梓に言った。

「知っている人がいない高校に行って、スタートしたかったの。最初から」

久美子は、同じ中学の生徒の多数が選ぶ南宇治を避け、北宇治高校に入学した。
このことが、麗奈が言う「当たり前の人の流れ」に抵抗したことと一致する。

入学当時の久美子は流されやすく優柔不断だが、それでも自分の意思で変わろうとした。

麗奈が新入生代表として立ち上がって挨拶をした際、2人は目線がはっきりと交わっている描写がある。
北宇治高校の入学式こそが、久美子が自分で選んだ道の第一歩であると言える。
麗奈が自分と似たものを久美子に感じたのではなかろうか。

麗奈は、悩みながら特別を目指す

アニメの大吉山での久美子と麗奈のシーンは最高である。
虫の声、夜景の美しさ、髪と服を揺らす風、その全てが2人のためにある。

山を登る前に、久美子から雪女についての語りがある。
山頂で麗奈が特別になりたいと打ち明けたとき、久美子は「このときなら命を落としてもかまわない」と思った。

この描写によって、「雪女」「麗奈」「久美子」が全て繋がっていく。

  • 雪女は美しく、魅了された者は命を落とす
  • 特別になろうとする麗奈は美しい
  • 麗奈に憧れ、全身全霊を捧げて特別になりたい久美子

遠回しなのにエモーショナルな表現が、観る人の心を打つ。
特別になるには、命をかけるような覚悟が必要なのだ。

あまりの魅力に、つい久美子は聞いてしまう。
「トランペットやったら、特別になれるの?」
なれる。もっと練習してもっと上手くなれば、もっと特別になれる。自分が特別だと思ってるだけのやつじゃない。本物の特別になる。」

麗奈は笑って「やっぱり久美子は性格悪い」と言う。
これはアニメ独自のセリフである。

麗奈の笑顔と「性格悪い」の意味するところを考察する。

小説においてもアニメと同じく、ソロパートを誰が吹くかで優子と衝突する場面がある。
その際に、麗奈が周囲から文句を言われたとしても「ねじ伏せたるわ、そんなもん」と言う場面がある。
ここで久美子が麗奈の手を取った時、麗奈の手のひらはぞっとするほど冷たい。

手の冷たさはアニメでは表現しにくいが、小説では複数回「麗奈の手の温度」に関する描写がある。

麗奈は、発言や行動は常に自信に満ちている。
しかし、「特別を目指すこと」「犠牲にするもの」に関しては、葛藤し続けている。
周囲から心ない言葉をかけられて、平気な訳ではない。

麗奈は、迷いながらも特別を目指し続けている。

それに対して、久美子は無邪気に憧れを抱く。
だから「トランペットやったら、特別になれるの?」と聞いてしまった。

努力は必ずしも結果を保証するものではない。

麗奈は現実を知っていて、「久美子は嫌なところを突く」と思った。
それでも一緒に特別を目指してくれる久美子」を見て、麗奈は笑ったのである。

3年生「斎藤葵」について

葵が退部した理由は?

久美子の幼馴染であり、滝先生の質問に対して「全国まで目指さなくて良い」に手を挙げ、吹奏楽部をやめた斎藤葵。
以下に、部をやめる葵を久美子が追いかけた後のシーンを抜粋した。

「久美子ちゃんも、ほかの人に迷惑かけたらあかんでしょ。さっさと音楽室に戻ったほうが良いよ。」
じんわりと甘さを含んだその言葉は、間違いなく拒絶だった。彼女の本音を覆い隠す、何重ものオブラート。
ねえ、葵ちゃん。本当は何を考えているの?
普段なら簡単に聞けるはずの問いが、喉の奥に引っかかって出てこない。

「何重ものオブラート」という表現の通り、葵が抱えていた思いはひと言で断言することが出来ない。
アニメと小説から読み取れる葵の心情は、以下の通りだ。

  • 受験も大事だが、本当は吹奏楽を続けたかった
    (麻美子と同じ)
  • あすかへのコンプレックス
    (小説のみの描写、勉強でも吹奏楽でもあすかに勝てない)
  • 上の2つの本心を隠して「吹奏楽部をやめるのが良い選択だ」と思い込もうとした
    (自分への言い訳)
  • 部内の揉め事でやる気のある2年生が部活をやめたことへの後悔

葵の心情を順番に解説する。

葵の心情その1「本当は吹奏楽と楽器が好きである」

葵は本心では、楽器を演奏するのが大好きである。

アニメでは「良いな…久美子ちゃんは。」「オーディション、頑張りなよ!」言い、と素直に久美子を応援する。

小説では「私は、そこまで吹部が好きちゃう」「部活なんて、ほんまはもっと早くやめたかった」と言う。
久美子はこれが嘘だと気が付いている。

麻美子のように久美子に嫌味を言う場面もあり、「受験の被害者」としての一面を持っている。

後日談では、葵は大学で吹奏楽サークルに加入している。
趣味として楽器を続けたい程に吹奏楽が好きなのだ。

葵の心情その2「あすかへのコンプレックス」

葵はあすかへ強いコンプレックスを持っている。これはアニメではあまり描かれていない。
以下、小説より抜粋。

(退部するシーン)
彼女は扉の取っ手に手をかけ、そこで1度振り返った。 その視線があすかに向けられる。彼女はただ、じっと葵を見つめていた。そこに感情は一切ない。 去りゆく部員にあすかは、名残惜しさすら示さなかった。


(葵と久美子の会話)
「いちおう大丈夫だと思う。あすか先輩がフォローしてくれたから」
「またあすかか」「あの子、本当に万能やんな。勉強もできるし、演奏も上手いし」
「あすか先輩、頭いいの?」
「いいよ、めちゃめちゃいい」 「私の第一志望、あすかの滑り止めやから」 「私もあすかみたいに賢かったら、部活続けられたのに」
「葵ちゃん、」「部活やめたの、後悔してない?」
「してないよ。まったくしてない」 晴れやかな表情で言う彼女の指が、自身の腕をぎゅうとつかむ。白い皮膚に残る赤い痕。それがあまりにも痛ましかったものだから。
「そっか」 久美子は笑って、だまされたふりをした。

この部分の他にも、小説の短編集のひとつに葵のエピソードがあり、赤裸々にあすかへのコンプレックスが語られている。

葵は、自分に言い訳をしながらも、あすかに無視はされたくないという格好悪い一面を持つ。
「あすかへのコンプレックス」を理解すると、葵の心情は読み取りやすくなる。

葵の心情その3「大人のフリをして本心を隠した」

葵は大人であろうとして、本心を押し込んでいる。
以下、アニメより抜粋。

してないよ、全然してない。(後悔を)
私は吹部より受験の方が大切だったから、多分、部のゴタゴタがなくてもやめてたと思う。
私には続ける理由がなかったから。

アニメでは、麻美子のように「受験の被害者」としての印象が強い。

しかし、小説では言い訳する葵の格好悪さも痛々しく描かれる。
以下、小説より抜粋。

辞めるときにさ、意見は前から伝えてましたって言えるやん
葵ちゃん、部活辞めるつもりなの?
さあ?いまんとこはわからんけど。だって、部活で大学には行けへんし
葵ちゃんはどこの大学に行くの?
さあ?まだ決めてへん
嘘だ、と久美子は直感的に思った。 学生特有の自尊心を守る頼りない予防線。

表向きは「勉強が大事」という態度だが、その裏には「成績やあすかへのコンプレックス、吹奏楽への未練」がある。
葵の本心は見えない。

人物の描写に対して毒や棘を抜かないのが「響け!ユーフォニアム」の小説の良さだと思っている。

葵の心情その4「去年の部内の揉め事に対して後悔している」

以下、アニメより抜粋。

(部を辞める葵を晴香が引き止めるシーン)
今の部は去年までとは違うでしょ。コンクール金賞取るつもりでみんな頑張ってる。 去年あの子達やめるのを止められなかったのに、のうのうと全国目指すなんて、そんなことできない。
どっちにしろ、受験勉強しなきゃいけないのはほんとなんだし。これですっきりする。

このセリフは「受験勉強をしなきゃいけないのはほんと」と書かれている。
「のうのうと全国目指すなんてできない」は部長の晴香を納得させるための嘘なのではと思った。

しかし、アニメ・小説の両方において葵と香織が当時の先輩との仲を取り持とうとした描写がある。
以下、小説より抜粋。

(夏紀のセリフ)
「葵先輩はあの子らのこと気にしてた。小笠原部長もな。」 「でも……葵先輩だけは、あのときの自分がずっと許せへんかったみたいやけど」

葵が真剣に部活を思って行動したのは事実である。
しかし、部員がやめたことを自身が退部する言い訳にも使った。

葵本人も様々な思いが複雑に絡み合って分からなくなっている気がする。

3年生「中世古香織」について

「あすかにこだわる香織」と「あすかの不可解な行動」の理由

アニメの「トランペット(コルネット)のソロパートの再オーディション」が決定してからのあすかの行動は、個人的には謎だった。

あすかは言う。
「正直言って、心の底からどうでも良いよ。誰がソロとか、そんな下らないこと」

そう言っておきながら、香織のところへ頻繁に向かう。

また、香織があすかにこだわる理由も完全に腑に落ちた訳ではなかった。
「かっこいいからね。演奏者として、あそこまで切り捨てて演奏に集中できたらって思っちゃう。」

香織にとって、演奏者としてのあすかが特別なのは分かるが、それだけなのだろうか、と思った。

このあすかと香織の行動に関する理由は、小説を読むと理解出来た。
香織があすかのことを特別に思っており、あすかもそれを受け入れている。

以下、サンフェスの衣装を試着するシーンより抜粋。

「あすかもカッコいいよ」
「ふふん、ありがとう」
頬を赤らめる香織に、あすかが得意げな笑みを浮かべる。
香織はそっとその手を伸ばすと、目の前の少女の腕を引いた。
青いジャケットに、深く皺が寄る。
端正なあすかの横顔が、不意に香織のほうを向く。
「…どうしたん?」
あすかが小首を傾げる。その動作に香織は目を見開き、それから一気に顔を赤くした。
慌てたように、彼女はその手を離す。
「な、なんでもない!」

アニメでは、あがた祭りは「あすか・晴香・香織」の3人で行った。

しかし、小説ではあすかと香織は2人で行ったようだ。
「香織と行く。今日はデートやから。」
あすかがこれを言うと、軽妙で冗談のように聞こえるが、本当にデートだったのかもしれない。

アニメの2期では、2人は白と黒の色違いでお揃いの形の水着を着用している。

2人が卒業した後のエピソードでは、小説「北宇治高校吹奏楽部のホントの話」にて香織からあすかへの思いが描かれている。
(久美子3年生時点で、2人はルームシェアしており、左手の小指にお揃いの指輪をしている)

あすかが「誰がソロでもどうでもよい」と思っているのは本当である。
しかし、友人として「香織に結果に納得して欲しい」とも思っているのだ。
だから、香織の側に行く。

でも、甘い言葉はかけない。
期待を持たせるようなことはしない。

再オーディションを希望した香織の思い

トランペット(コルネット)のソロパートをどちらが吹くのか、麗奈と争った香織。

アニメは、香織の可憐なイメージを守って表現が行われており、ソロパートへの意欲にエネルギーを感じる。

また、同学年の晴香との他愛もない会話に友情が感じられる。
ほっとする、微笑ましい美しさがある。

(香織と晴香の会話)
「私、3年生なんだよね。これで最後なんだよね。3年間やってきたんだもん。最後は吹きたい。自分の吹きたいところを思いっきり。」
「じゃ、だめだったときはお芋買ってあげる。」
「夏だよ。」
「だから、私が探し回らなくても済むようにして。」

あすかが何もしないのを見て、晴香は「こりゃ一人でやるしかねえぞ、晴香」と独り言を漏らす。
部内が分裂する中で、晴香は部員に意見を募ることを決意した。

それとほぼ時を同じくして、滝先生が松本先生との会話からヒントを得る。

(松本先生のセリフ)
音楽というのは良いですね。嘘を付けない。良い音は良いと言わざるを得ない。お父様もそう言ってらしたと記憶しています。」

コピー機の枚数が部員と滝先生の数を示し、この美知恵の言葉で滝はソロパートの再オーディションを行うことを決めた。

晴香が、滝先生に伝えるとして「オーディションに不満がある人」と質問した際、香織は手を挙げていない。

しかし、滝先生が「再オーディションを希望する人」と質問した際、香織は立ち上がって手を挙げた。

香織の決意を祝福するかのようなBGMは感動的だ。
納得へ踏み出した香織を讃えているようであり、音楽が行動の意味を明確にしている。

晴香の問いかけに香織が手を挙げず、滝先生の問いに手を挙げたのはなぜか。

香織は「オーディションに不満があった」訳ではない。
あくまで「再オーディションを受けて納得したかった」だけなのだ。

ソロオーディションを吹く人を決定するシーンでは、
香織へ、優子と晴香が拍手する。
麗奈へ、久美子と葉月が拍手する。

どちらにも拍手しなかった人が多いのは、この時点での部内の人間関係の悪さも影響している。
拍手する勇気がなかったということだ。

緑が拍手しなかったのは「コンクールの結果以上に大事なものもあるので、揉め事がなくなるなら香織先輩がソロでも良い」と思っているからである。(小説より)

あすかがどちらにも拍手しなかったのは、香織の以下のセリフに理由があるだろう。
「言ってほしくない。冗談でも、高坂さんが上手いとか」

小説は香織の苦しみや不安など、不格好な面も含めて曝け出している。
コンクールの前日にホールを借りた日、香織は自らソロパートの再オーディションを申し出ている。

(香織の演奏)
香織の繊細な音色で柔らかな音楽が、ホールいっぱいに広がった。
高音部分も、滑らかに吹くのが難しい音と音のつなぎ目部分も、すべてが完璧な演奏だった。
欠点が何ひとつ見当たらない。香織の演奏は格段に上手くなっていた。血のにじむような努力の跡が、その演奏からはうかがい知れた。
「ずいぶんと上手くなりましたね、驚きました」

(麗奈の演奏)
最初の一音目がラッパから飛び出た瞬間、久美子の耳は明確に先ほどとの差異を感じ取った。
脳味噌をぶたれたような衝撃。高音が空気を揺らし、久美子の耳へと突き刺さる。
迫力のある音色は、しかし美しい響きを保ったまま、まっすぐにホールを駆け抜けていく。
同じ楽譜を見て同じ音を再現しているはずなのに、なぜ二人の演奏はこうも違うのだろう。
こんなの、と久美子は思った。こんなの、ズルい。こんなのが同級生だなんて。

「中世古さん、あなたがソロを吹きますか?」
「吹かないです」
「……吹けないです」
香織はまっすぐに後輩を見つめた。その視線の力強さに、麗奈が珍しくたじろいだ。
「ソロは、あなたが吹くべきやと思う」
その声は震えていて、その瞳は赤かった。それは恐らく香織の本心であり、そして本心とはほど遠い感情だったに違いない。

「……あのときは、生意気言ってすみませんでした」
「事実やから」
ただ、あの子は納得したいだけやねん。
不意にあすかの声が耳元で蘇る。その言葉の意味を、久美子はここで初めて理解した。
香織は多分、わかっていたのだ。自分の演奏が、麗奈に劣っていることを。
それでも彼女は諦められなかった。きっと、香織は負けたかったのだ。
圧倒的な差をつけられて、自分の心を折ってもらいたかった。
負けを認めるために、彼女はいままでずっと練習を重ねてきたのだ。
本番を迎えることのない、ソロパートを。

小説では、麗奈の「生意気言ってすみませんでした」という謝罪の言葉ですら、香織は「事実やから」とまっすぐに受け入れている。

香織は麗奈の演奏を上回ることが出来なかった。
だが、納得を求めてもがいたその姿が、我々の心に深く刻まれている。

2年生「吉川優子」について

優子は麗奈をいじめてはいない?

ソロパートを吹くことになった麗奈に対して、優子が激しく詰め寄るシーンは印象的である。

この場面の優子の感情の高ぶりと発言内容を踏まえると、優子は麗奈をいじめたと思うのは自然である。

「うちは納得できません!」
「なんで香織先輩じゃなくて高坂なんですか!」
「ちょっとアンタ、なんで無視すんの」
「なんですかやないやろ!なんで香織先輩じゃなくて、アンタがソロなんさ」
「滝先生と前から知り合いやったやろ」
「アンタの父親と滝先生って交流あるらしいやんか。だからアンタは滝先生に贔屓されてーーー」

アニメを初めて観た際、特にこの場面が印象に残りやすい。
その他のやり取りよりも強烈で、印象が引っ張られる。

1年前、香織はいじめや無視をした当時の上級生に「あの子達を無視するのはやめてください」とお願いをした。

そんな香織に憧れている優子が、後輩に対して当時の上級生と同じ仕打ちをするだろうか。
香織先輩マジエンジェルである。

また、優子がいじめをするような人物であれば、夏紀と仲良くはなっていないだろう。
「あいつら、性格ブスやから」には、優子は含まれていない。

夏紀が優子に言った「余計なこと、考えてないよね?」は視聴者にいじめや嫌がらせを想起する。
しかし、夏紀と優子の関係性を踏まえると「余計なこと」は陰湿な手段ではないだろう。

結局のところ、実際に優子が麗奈をいじめたかどうかは分からない。
個人的には「感情的に接することはあれど、いじめてはいない」と思っている。

小説よりもアニメの方が優子の登場シーンは多く、追加されたシーンによって優子が誤解されないように配慮されている。

アニメでは「優子は香織の代弁者」

アニメは優子の登場頻度が多く、小説は香織の登場頻度が多い。
(アニメ制作陣は優子好きらしい)
実はこの変更が、アニメ1期における最大の工夫である。

小説のソロパートの再オーディションのシーンで以下の描写がある。

(香織のセリフ)
「ソロは、あなたが吹くべきやと思う」
それは恐らく香織の本心であり、そして本心とはほど遠い感情だったに違いない。

香織の相反する2つの感情のうち、「本当はソロが吹きたい」という思いの代弁アニメでは優子に託したのではないだろうか。

「一年でこの音って、ズルいよね。反則だよ」

アニメでの優子のセリフだが、小説ではソロオーディション後の久美子のセリフである。

香織先輩派である優子が口にすることで、この発言の重みは増す。
優子は、麗奈の演奏が優れていることを客観的に理解している。

同時に、香織もこの事実に気が付いているだろう。

「わざと、負けろっていうんですか」
「バレたら、私が脅したことにしていい、いじめられたって言ってかまわない」
「そんなことしなくても、オーディションで香織先輩が私よりも上手く吹けばいいんです」
「関係ないですよね。私には関係ないことですよね。」
「香織先輩は最後なの。今年が最後なの。」

https://twitter.com/misogi1341/status/1000592921337331712

小説によると、香織は3年生になるまでコンクールメンバーとして吹いたことがない。

香織の実力と努力の量を考えると、その事実がいかに残酷か分かる。

麗奈に頭を下げたのは優子だが、香織だってそうしたい位に真剣だったと思う。
香織が我慢したわがままな思いを、優子が代弁して取った行動に思えてならない。

オーディション前、優子と香織は一緒にいる。
優子は「あの、いえ、頑張ってください!」と何か言いかけるが、言えずその場を去る。

夏紀の背中で優子は泣く。

優子はオーディションの結果が予想出来ている。
恐らく、香織もそうであるはずだ。

再オーディション後に泣き崩れる優子。
本当は香織だって、泣きたかったはずである。

香織は結果に納得し、3年生としてあるべき態度を保った。
それに対して、優子は香織の思いも引き受けて、代わりに泣いているように見えた。

再オーディション後の香織に対する描写を改めて抜粋する。

香織は多分、わかっていたのだ。自分の演奏が、麗奈に劣っていることを。
それでも彼女は諦められなかった。きっと、香織は負けたかったのだ。
圧倒的な差をつけられて、自分の心を折ってもらいたかった。
負けを認めるために、彼女はいままでずっと練習を重ねてきたのだ。
本番を迎えることのない、ソロパートを。

この文章が持つ悲痛さを、アニメ制作陣は優子に託した。

優子の行動の意味を知ることで、作品を見返すと「優子がわがままとは思えなくなる」理由が分かる。

私もアニメの初回視聴時は「久美子・麗奈視点」でしか観ていなかった。
観る角度が変わることで、「こんなに新たな発見があるのか!」と驚かされる。

結論「響け!ユーフォニアムは何回も観るべき!」

私がここに書いたことに気が付いたのは、「響けユーフォニアム」の小説やアニメを何度も観た後である。
視聴回数が浅いうちは、キャラクターの行動の理由を理解しきれない部分がたくさんあった。

このアニメは何度見返しても新しい情報の発見があり、細部まで作りこまれた魂のこもった作品であることが伝わる。
このレベルは「映画でやれよ!」とも思う。

初めて観ても感動できるが、深く掘り下げることで更に感動するという魅力を持った「響け!ユーフォニアム」は何度も見返したい作品だ。

アニメの「響け!ユーフォニアム」を観る際は、U−NEXTがオススメ。
私も使っており、アカウントを複数使える。実家にいる家族にもユーフォを観てもらった。
映画版「誓いのフィナーレ」を含む「響け!ユーフォニアム」シリーズを配信しており、31日間無料で観ることができる。

現在、アニメ2期の考察を準備中。
1期よりもさらに衝撃の情報を掲載する予定だ。

カエル

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響け!ユーフォニアムアニメ1期を徹底考察!

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